フィジオが町にやってきた

負傷者続出の夫のチーム。CAFコンフェデレーションカップのノックアウトステージへ勝ち進むためには、次の試合にどうしても勝たなければいけない。そこでケガ人のケアのため、急きょ青年海外協力隊員でフィジオセラピスト(理学療法士)の山田くんがドーマに来てくれることになった。フィジオ山田(と八橋家では勝手に呼んでいます、失礼!)くんは亀山市出身の三重県人で、夫の前チームも診てくれてとてもお世話になっている。ガーナでは、試合の際はルール上資格のあるドクターがベンチに入るけど、普段の練習はマッサー(マッサージ士の略?)と呼ばれる人がケガの応急処置などをしている。でもマッサーは無資格で正しい知識もなく、捻挫と思われるようなケガでも患部をグリグリまわしちゃったり、ひもでしばるという呪術のようなおそろしいやり方で対処する。選手は何かやってもらって治った気になるらしい。病は気から?いやいや大事な試合で最高のパフォーマンスができるように、ちゃんと治しとかないとダメでしょっ、てことで専門家にお願いすることになった。

長距離移動を経てドーマに来てくれたフィジオ山田に、スタジアムやドーマの町を紹介する。任地以外にもいろんな町を訪問して治療や、回復のためのライフプランまで様々なアドバイスをしている彼にとってのドーマは、道路もとても整備されているきれいな田舎町、という印象みたい。滞在中は私たちと同じホテルに部屋をとり、夜はチキン、朝は卵サンドイッチと名物を食べながら、仕事のこと、サッカーのこと、「明日、あさっての次はささってやよなっ!」のような三重県の方言のことなどを話した。久しぶりに夫以外の日本人と会話できてうれしかった。

 

痛いところは足だけじゃなくて腰もなんです、って言ってるトップバッターの選手。
彼も足、腰が痛いらしい。隣でマッサーが真剣に見てる。
この時点でもかなり痛みが残っていたゴールキーパー。
これはしかるべき検査を受けた方がいい…というしこり発見後のようす。
キャプテンの超しっかりした身体も調整。彼も腰痛。
肩甲骨をやわらかくするためのストレッチを教えてもらっているところ。
いつも一生懸命な選手。説明する目も真剣そのものだった。
聴診器が出てきたときは目がますますまん丸になってた。気になって視線が離せないようだった。
いつも全力すぎて疲労がたまっている彼には、脱力するために股関節をゆるめるストレッチを伝授中。

 

ケガをしている選手にはスタジアムに集まってもらい、現在のケガの様子とこれまでのケガヒストリーをヒアリング後、今痛みのある箇所を診て、ストレッチ方法・筋トレ方法・素足ラン・休息の大切さなどをアドバイスしてもらった。数日前の試合中に突然の痛みで倒れたゴールキーパーは足にしこりが見つかり、CTスキャンか超音波で検査することを勧められた。彼はその後すぐにCTを撮ったおかげで、原因と治療法がわかったとのこと。痛みがおさまればあきらめてたCAFの試合にも出られるかも!他からもオファーが来ているほど実力と将来性のあるゴールキーパー、彼はきっとフィジオ山田にすっごく感謝していることだろう。彼はラッキーで、きちんとしたケガのケアがなされず、選手生命を短くしている選手がいっぱいいるんだろうな、とガーナサッカー界の現状に辛くなった。

 

施術の合間に応急処置についての説明。マッサーとポーターの3人が聞いてくれた。

 

マッサーだけでなく、用具類の管理をしているポーターの2人も、フィジオ山田から、まずケガをした選手の状態を聞いてね、などケアの仕方を教わっていた。これでスピリチュアル方式がなくなればいいけど。

 

遅れたけど、どうしても診てほしい!と言って追いかけてきたので、バスステーション前のお店で急きょ施術スタート。
お店はただのお店ではなく、ライフル銃屋さんだった!銃は目と鼻の先!!こわっ!
落ち着いて施術するフィジオ山田。さすがです。

 

治療が終わると、忙しいフィジオ山田は次の仕事先へ。バスステーションへ送っている途中、予約の時間に来なかった選手から、どうしても自分も診てほしいと泣きの電話が入った。そんなにごねるなら時間通り来ればいいのに!もう移動のバスのチケットもおさえててバスステーションに向かっているからダメ!と断ったら、なんとバスステーションに現れた。ガーナのお決まりでバスは乗客が集まるまで発車しないので、待ち時間の間施術してくれることになった。選手がこの中で、と言うので行ってみたらなんとライフル銃屋さん!えー!開けっ放しやったし誰もおらんかったけど・・・。ハラハラしながらも狭い店内にヨガマットを広げた。予定の人数をなんとかこなしてもらい、フィジオ山田とお別れした。無理聞いてくれたおかげでチームのためになりました。山田くん本当にありがとう。お世話になりました!

その後、診てもらった選手たちは、トレーニング開始前にアドバイス通りストレッチなどをきちんとこなすようになっているそうだ。ある朝私がジョグしていると、ライフル銃屋さんで診てもらった選手も走っていてすれ違った。彼はにこにこしながら「これでぼくの足はもっと良くなって強くなる!」って言う。かわいいやん!と思いながら覚えたての「カクランカクラン!(少しづつね!)」で返した。みんながんばれー!なんにもできないけど、ちょっと母っぽい気持ちになってるけど、応援してるよー!

崖っぷちからのCAFコンフェデレショーンカップ

夫がドーマの町がホームのAduana Stars FC(エドゥアナ スターズ)に移籍したのは、このチームがCAFコンフェデレーションカップに出場するから。ワールドカップと同じように、グループステージ→ノックアウトステージと進む。エドゥアナは4チームで行うグループステージの全6戦のうち2戦を終え、現在最下位…。なんとかして次の試合には勝たなくてはいけない。そんな崖っぷちな状態で夫は監督に就任した。試合は7月18日水曜日13時キックオフ。対戦相手はコンゴのAS VITA CLUB。夫がドーマに着いてからの練習は4日、練習試合が1日。完全オフが1日。時間が短すぎて大丈夫なのか心配だけど、信じて能天気になるしかない私。

 

ダメ出しのたびに何回も刈り直してくれてた。
ガーナのピッチはデコボコで土やはげはげの芝生のところがほとんど。そのせいでショートパスがうまくつながらないので、ぼかーんと蹴り上げるパスが多くなってしまっているとか。ピッチの状態は戦術にも影響するんだな。
はじめてラインをひいているところを見た。クラブ活動を思い出すなぁこの白線。
グラグラのベンチも修理中!
前日からメディアの人たちは準備中。練習風景も撮影していた。
試合はアフリカ全土でライブ中継してたそう。
さすがFIFA,さすがCAF!
ピッチにもマイク。
テレビでは臨場感たっぷりでお届けしております!って感じだったんだろうな。
フラッグ係のボールボーイたち。何度もリハーサルしてた。

 

試合前日。いろんなところがFIFAの基準に合わせて手直しされている。FIFA・CAF公認ブランド以外はNGらしく、スタジアムへのトンネルのクラブのスポンサーのロゴ、スタジアム外壁のブランドボードなどもすべて黒いビニールで覆われた。ふっさふさだった芝生は短く切り揃えられ、ゴールポスト、ライン、フラッグ用のポールなどが準備され、LIVEテレビ用のスタンドも設置、機材を積んだテレビ局の車もスタンバイ。ガタガタだったベンチも修理され、あちこちに落ちてたゴミもきれいに片付けてある。大音量でヒップホップが流れていて、なんだかサーフィンの大会を思い出す。

 

左はキャプテン。右は急きょどこからか駆り出された通訳さん。大役、おつかれさまでした。
クラブハウスの中のプレスルーム。どちらかというとコンゴ側のメディアの方が多かった。

 

13時からは公式のプレスカンファレンス。両チームの監督とキャプテンが対応する。一応自称専属カメラマンの私も入室許可されたけど、ホンモノの方々のお邪魔にならないように控えめで。実は相手チームはすでに終わっているはずだけど、フランス語圏のコンゴの人たちのために英仏の通訳が必要なのに手配されてなくて、まだ始まってなかったらしい。はい、いつものかんじ。段取り苦手やもんね。ようやく夫のチームから始まり、相手チームへ。後で聞いてみるとめっちゃ頼りない通訳さんだったらしく、いっぱいしゃべっても3分の1くらいのボリュームしか訳してくれてない感じだったみたい。通訳って本当に重要。私がたどりつけるのはいつの日か…がんばろう!

 

相手チームの練習を観察中。身体はデカいし強く見えるんですけど。

 

プレスカンファレンスが終わり、相手チームの練習をチェック。その頃選手たちは、町の中にあるキャンプ(合宿所みたいな施設)で試合の2日前から泊まっていた。裕福でない選手も同じようにケアするため、チームの結束を固めるため、試合時間に身体をピークに持っていくために起床時間や食事内容などをコントロールするため、らしい。夫は前日朝9時の早いランチをみんなと一緒に食べに行き、ビデオ分析した結果のアドバイスをしに、また夜キャンプへ出かけて行った。

 

スタジアムにはCEOの名前がついているらしいけど何回教えてもらっても覚えられない長いお名前。「炎を吐く犬」がマスコットで黄色と緑色がチームカラー。
スタジアムの表でエドゥアナのフラッグや応援グッズ販売中。私もフラッグ買って試合中首に巻いてた。フラッグにはとても炎を吐きそうにないおだやかなワンコのプリント。蹴ろうとしているのは前足、あれハンド?ってうわさが…。かわいいからOK♡
当日は雨でぬかるんでたけど、ラインもコーナーフラッグもバッチリ。
見違えるほど試合モード。

 

試合当日、夫は気合を入れるためにヒゲをそり、スーツを着る。私的にはヒゲがあった方がしまる気がするけど、そこはゆずれないポイントらしい。10時30分頃スタジアムに到着。邪魔にならないところで写真を撮ってると、夫から着てきたシャツの自分のスポンサー会社のロゴにNG出たので、別のシャツにアイロンかけて至急持ってきてほしいとの指令!まじか?わかった!!と急いでホテルへ戻り、汗だくでアイロンかけて届けたのは試合開始1時間前。ほんと油断できません。

 

隣に座っておられた町の名士と思われるえらいさん3人組。みなさんすごくフレンドリー。特に手前の人は私の隣で、サッカーに詳しい様子で熱烈に応援してくれてた。
VVIPシートに座ってたら配られたオフィシャルプログラム。本になっててかっこいい。
エドゥアナのスケジュールもちゃんと書いてある!がんばれー
CAFのレフェリーたちもウォーミングアップ。選手に負けずデカい。

 

クラブの計らいでVVIPシートで観戦することができた。いつもは日本人コミュニティのみなさんが応援に来てくれてたけど、さすがに遠い町なので今回は私ひとり。心細いけどがんばらないと!隣に座ったのは町のえらいさん3人組。みんな通るたびに敬礼していく。笑顔だけどトラディショナルスタイル貫禄あります。徐々にスタジアムがエドゥアナサポーターで埋め尽くされていく。収容人数は少ないけど試合の日はいつも満員になるらしい。頼もしい限りだ。勝つって信じてるけど、試合はいつもナーバス。本当は見たくないくらいコワイ。

 

入場シーン。子どもたちも猛特訓の甲斐あってかきれいに歩いてた。
整列!左がエドゥアナの選手たち。ピシッと並んでる!
スターティング11。
実は2名下痢、1名マラリア潜伏中。1名登録の問題で出場できないという超薄い選手層だったとか。下痢の選手は2人とも夫に正露丸をもらって出場していて、そのうち1人が見事ファーストゴール!そしてすぐ退場…涙。マラリア潜伏中の選手もきっつい注射とクスリが効いたのかセカンドゴール!
苦しい中みんながんばってたんだね(涙)
試合前、選手が円陣を組んでいるとき、ベンチのみんなは一緒にこのポーズをするのが慣習だそう。
前半2ゴールを決め、後半は守備に徹していた。ガーナは全般的に守備が弱いらしく、限られた時間の中、守備とカウンターのみを集中して練習していたそう。確かに後半守り切った!短期間で変われるってスゴイ!
ケガも多く、タンカが駆けつけるシーンも。
タイムアップ!勝って抱き合う夫と選手。
おめでとう!!!
総立ちの、その後のみなさん。
ゴールと勝利の瞬間は写真どころじゃないので、シャッターチャンス逃しまくり(笑)
ドーマの町、周辺の町から来てくれたたくさんのサポーターたち。
試合後のスタジアム。

 

CAFのフラッグ、選手が入場してとうとうキックオフ!夫のチームは早々に2点ゴール!サポーターたちは総立ちで歓声をあげる。私も飛び上がり、ヤッターと叫び、思わずとなりのえらいさんと抱き合って喜びあった!相手チームが1点を返して前半終了。やっとふつうに息ができる。あと10分っていうところからは「早く終われーこのまま終われー」と祈ってた。終了!2-1で勝利!サポーター、選手、コーチやスタッフたちもみんなうれしそう!本当によかった。試合後のプレスカンファレンス、ミーティング後、相手チームを乗せたバスが出発し、選手たちが帰りようやく夫が出てきた。まだたくさん待ってくれているサポーターたちに挨拶し、アタの運転する車に乗ってホテルへ帰った。

 

勝った後のワインは格別!今夜は勝利の余韻にひたって、明日からはまたワインが美味しく飲めるように、ハードワーク再開!

 

お祝いは、先日練習試合に勝ったごほうびにマネージメントからもらったワインで!明日は軽く練習して明後日は完全オフ。次は同じチームと今度はコンゴでアウェイマッチ。きっともっときびしい戦いになるはず。でもこのグループステージを突破すれば、ノックアウトステージのクウォーターファイナルに進出できる。やるしかない!今は夫のそばにいて応援するのが私の仕事、いい仕事するぞ!